Vol.4 謎の咳(気は上下する)|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.4 謎の咳(気は上下する)

2021年09月16日

新型コロナが広がって、咳ひとつするのも気を使う世の中ですが、皆さんは「咳」について考えたことはありますか?風邪をこじらせた気管支炎、喘息、と感染症かアレルギーを思い浮かべる人が多いと思います。気管支炎ならば、細菌や痰を外に出そうとして咳をするのですが、人が咳をするときのは風邪を引いたときばかりではありません。例えば、同じ空気を吸いたくないぐらい嫌な人が隣に座ったとき、その臭いを嗅いだとき、咳が出そうなった経験はありませんか?嫌な感情、不安感が胸に詰まってそれを身体が吐き出したいと感じたとき、このような時にも私達の身体は咳をするのです。つまり、東洋医学では「咳」=「何か(身体の中に留めておきたくない物を)を口から吐き出す行為」と考えるのです。

 

麦門冬湯という咳の処方があります。この処方は咳を出したくなる身体反応のそのものに対して働きかける処方です。「大逆上気」を治す。古典にはこう記載されています。「大逆上気」ってなに?とお思いかと思いますが、火山の噴火を想像して下さい。麦門冬湯は不要な物を上に向かって爆発的に噴き出す結果咳になった時、その吹き上がりを鎮めて下に降ろす事によって結果的に咳を治そうという発想の処方なのです。

 

不安な気持ちって上に上がりますか?下に下がりますか?ぞわぞわする感覚はどっちに向かいますか?背中の毛が立つときはどっちに向きますか?苛立ちって上ですか?下ですか?毛が逆立つって言いますね。これも大逆上気です。毛並みって下に撫でると落ちつきますけど、上になで上げると立ちますよね。こういう精神が高ぶりを下げるのも麦門冬湯です。ですから、精神が高ぶって眠れない時、、こう言う時にも麦門冬湯は効いてしまいます。ある患者さんに言われたことがあります。「咳の処方でもらった麦門冬湯、これ、睡眠薬だったのですか?」って。この考えを延長していくと、悪阻にも有効だったりと症状を列挙するとあれもこれも、、となりますね。そもそも咳の処方が不眠にも効くって聞くとちょっと不思議に思う人も多いかと思いますが、東洋医学ではこんなふうに人の身体をひとつのシステムと考えてそのシステムに働きかけることで症状を改善するように設計されているのです。

 

さて、この「システムに働きかける」っていう考え方なんですが、応用範囲が広いんですよ。今、心の問題がきっかけで咳がでたり、眠くなったりする人に麦門冬湯っていう漢方薬を紹介しましたが、同じ作用を薬でなくて手技で出す事だって可能なんです。パニックになって興奮している人、なかなか眠れなくなっている人の背中をトントンとかるく叩いたり、背中を撫で下ろしたりすること、ありませんか?そう、身体に触って下に撫でることも気を下げる行為です。(下から上になで上げたら、、逆に興奮しますね、、、これを逆撫でって言います。)状況によっては麦門冬湯以上に効果を発揮します。人に触ってもらっても良いですが,自分自身で胸を優しく撫でる行為だって効果があります。

 

私達は、つい、自分の身体を粗末に扱いがちです。時々、自分自身の身体を撫でて労ってみましょう。明日からのあなたの身体がちょっと違ってくると思いますよ。

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