Vol.26 「熱」と身心の関係(夏の暑さが心と体に及ぼす影響)|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.26 「熱」と身心の関係(夏の暑さが心と体に及ぼす影響)

2022年07月30日

身心はコインの裏表

裏がないコインはなく、表がないコインもありません。コインを手に取ったならば、裏表の片方だけを取る事は出来ません。同様に生きているかぎり、体は心と一体であり、あらゆる物事は身心両方の側面を持ちます。コインの表を押すと、裏も一緒に押されます。それはつまり、体に変化が与えられると(自力でも他力でも)、心も同時に影響を受けると言うことにもなるわけですね。

 

夏は暑い、暑さは「熱」の性質を持っている

「熱」は温度を上げますよね。体が冷え切っているとき、筋肉は硬くなり、各臓器の活動も低下しますが、体を温めていくと次第に体が動くようになっていきます。「温かい」適温程度であれば快適に身体は動いてくれますが、必要以上に身体に「熱」が加わえられると、発熱・鬱熱に繫がります。身体に閉じ込められた余分な「熱」は、頭痛、倦怠感を引き起こし、排熱反応として鼻出血や不正出血を起こします。更に出血による排熱が出来ないときは、倦怠感につながって最終的に食欲不振、暑さ負けといった状態になります。

一方、心体に「熱」が蓄積されるとどうなるでしょうか?何かに熱中するとき、体が熱くなりますよね。熱中したパワーを外向きにも放出する人を熱血漢と言ったりします。つまり心に対して「熱」は興奮をもたらします。興奮がマイナスに働くとき、「熱」は不安・焦燥感を与え、その結果不眠になったりもします。このように、「熱」は身心に対して「動」の性質をもたらしますが、過剰な「熱」は身心を消耗させます。

 

「血」は「熱」と仲良し

まず、東洋医学的な意味における「血」について簡単に説明しておきます。東洋医学の概念において「血」は身心を潤します。身心を潤すということを別の良い方をすれば、「血」は皮膚を潤し(体の栄養)、心も潤し(心の栄養)と言えます。さらに言葉を変えるとお肌の潤いは、心の潤いに繫がり、お肌が乾くと心も渇くという訳です。

次に、「血」と「熱」との関わりは、熱血漢、血気盛ん、熱と血の組合せを熟語の中に見られるように、血と熱(東洋医学的な意味)と仲良しです。適量の「血」が適度な「熱」と結びついて循環していれば、身心は穏やかでいます。しかし、ひとたび、「血」が過栄養によって過剰になると身体には皮疹、痒み、のぼせが生じ、心体は興奮、多動傾向となります。多動の状態は「血」を消耗して最終的にはあしたのジョーよろしく燃え尽きて灰になってしまいます。反対に、血が欠乏すると皮膚が乾燥し粉っぽくなり、心は動かず、テンションが低くなります。そして、その「血」は身心にとっての栄養であり、栄養はほぼすべてを食べ物から得ます(正確には呼吸によって空気を取り込みそれと混ぜ合わせられて全身に行き渡るので呼吸も大事)から、胃腸の消化力が落ちると、「血」は欠乏し、身体は冷えていくということは当然のことという訳ですね。

 

さて、ここまで「熱」と「血」の定義、性質について説明をしてきましたが、夏といえば「暑い」!、夏と言えば「熱」!な訳です。夏には過剰な熱による症状が出やすいのです。皆さんは熱中症は暑さが原因だと言う事には関心を持っていると思いますが、この「熱」がよもや心にまで影響を及ぼして抑鬱を引き起こしたり、不安や焦燥感を加速させたりまですることはあまり知らない方が多いと思いますが、実際、7月後半にはいってから私のクリニックには暑さによる精神のトラブルを抱えた方がちらほら来られています。ちょっと視点を変えて周囲を観察して見るようにして下さい。不安や焦燥感が強くなり、喉の渇きから冷たい物をがぶ飲みしたりして、消化力まで低下させてしまって、心も体もカサカサにならないように気をつけて下さいね。

 

熱を冷ます方法

小学生のころ、夏の体育の時間のあと、水道の蛇口を上に向けて頭から水をかぶった経験は一度はあるでしょう。「熱」は水で冷ます事ができます。物理的に水かけることは、シンプルですがもっとも効果的な方法です。映画で興奮している人に水をかけるシーンを見かけたことありませんか?実際に熱をとると、正気に返ります。暑さによる倦怠感は首筋を保冷剤で冷やすことも有効です。普段、熱がこもっていないときに麦茶を飲むのは御法度ですが、鬱熱時に麦茶は有効です。同様にコリアンダー水もよいでしょう。

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そして漢方の黄連解毒湯も同様の効果をもちます。効果の強さはそれぞれ違いますが、基本的には同じ方向をもっていますので、熱を取る時に手元にあるものをつかってクーリングをしながら症状を観察して対処していくことが大切です。なお、首は冷やしてもいいですが、足は冷やしてはダメですよ。首を冷やしても内臓は冷えませんが、足を冷やせば内臓が冷えますから。

 

では、「熱」の性質を身心両面において観察しながら夏を過ごしていきましょう。

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