Vol.47 切り抜き研究にご注意を!|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.47 切り抜き研究にご注意を!

2023年03月22日

下剤が認知症を増やすのではなく、常時下剤を必要とする便通異常が問題なのです。

こんな記事を友人が引用していたので、ひとつ書いておかねばと思い、少し書いておくことにします。

センセーショナルな見出しに潜む罠

下剤を日常的に使用していると後年の認知症発症リスクが高まる可能性(中国科学院深圳先進技術研究院)
なかなか、センセーショナルな書き方ですよね。「下剤の使用と認知症」、下剤を使用している人の数は、多いのでこの記事は目を引きます。

本質はどこに?

しかし、本当に下剤が問題なのだろうか?本質は下剤ではなく、「下剤を常時必要とする人」の問題ではないのだろうか?と考えると、真実が見えて来ます。私は日頃から、消化力の重要性を口すっぱくお話ししていますが、この問題を「消化力に問題があり、便通が安定せず、結果として腸内細菌が便秘環境に適応したものが増えている状況」と理解したならば、この話はきわめて当然の事だろうと、納得できます。消化力が安定しないと言うことは、「活動に必要な栄養やエネルギー摂取に問題を生じている」、と言うことなのですから、集中力が落ちるのは容易に想像できますよね。また、便秘をすると、感情も不安定となり、イライラするようになります。月経前にイライラした経験を持っている人は多いでしょう。その時は、便通はどうでしたか?これがご高齢の方ですと、認知症の症状が悪化したと言われてしまいます。便秘は多方面に影響を及ぼします。例えば、ぎっくり腰をした時、痛みに耐えている時、便通はどうでしたか?便秘と痛みに関する論文も多数あり、便通を良くすると痛みも軽減します。つまり、消化力が整うことは、あらゆる場面で大切なのだと言うことです。となれば、この問題は下剤ではなく、消化力の安定、つめり、口から肛門までの間の流れをよくする生活が大事だよね。では、その為に必要なことは?睡眠?食べ物?足湯?となる訳です。何のことはない、養生って大切よね。に行き着くのです。

科学論文のお作法と切り抜き

研究者が論文を書く時、消化力が大切だよね、っていうテーマで書くと論点が複数となってまとめにくい為、全体の中から論文になりそうなところを切り取って研究を進めます。これは、科学論文を書くお作法なので、論文を書く為には必要な事です。しかし、その代償として、全体像が見えなくなります。ニュースでは、センセーショナルに書きやすい為、こういう論文を頻繁に取り上げますが、これを読むときには、少し引いて、視野を広くし、どういう背景を持っているのかについて、想像力を広げて読む事が大切です。つまり、科学論文を読むときには、その論文が全体像のうちどこにフォーカスをしているのかを考えて読まねば、間違った理解をしてしまうと言うことですね。
切り抜き研究にご注意を!

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