Vol.50 「自律神経失調症」という言葉の罠|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.50 「自律神経失調症」という言葉の罠

2023年04月27日

自律神経失調症という言葉

動悸、目眩、多汗、息苦しさ、腹痛、下痢、このような不調があって、検査上異常が無い時、この怪しげな言葉が使われます。それは「自律神経失調症」という言葉です。本当に自律神経が失調していたら呼吸は止まるし、心臓も機能を停止しているはず。でも、そうではありませんよね。では、これは一体どういうことなのでしょうか。

私たちが生きている間、肺や心臓は、私たちが意識して動かさなくても、休むこと無く動き続けます。これを支えているのが自律神経ですが、なぜ変調を来すのでしょうか。その仕組みを飛行機を使って説明したいと思います。

 

操縦桿を握っているのは誰?

飛行機にはオートパイロットと言って自動運転の装置がついています。離陸して安定軌道に乗ると、飛行機は自動運転に切り替えられます。この自動運転システムはちょうど自律神経に相当します。何事もなければ、パイロットは操縦桿を握る必要がありません。さて、この飛行機にエンジントラブルが発生しました。エンジン出力が足りず、機体が安定しません。あなたがパイロットならどうしますか?そう、自動運転を切って手動運転に切り替えるでしょう。このとき、エンジンは消化力を含む体力全般と考えてください。飛行に不安を感じたあなたは、手動運転に切り替えて飛行機を緊急着陸させようとします。今まで、鼻歌交じりに運転席に座っていたあなたは、急に緊張し、手に汗を握って操縦することでしょう。自律神経も同じ仕組みを持っていて、敵に襲われたり、危機対応をする際、心拍や呼吸をあげて、回避行動するために自らの意識(意志)で心拍数を上げたり呼吸を変えたりすることができるようになっています。「体に異変を感じた」、「外敵に襲われた」などの非常事態と判断したあなたが自律神経から操縦権を奪って舵を握る、これが、「自律神経失調症」の本質です。つまり、自律神経からあなたが自律を奪うから、動悸をしたり、汗をかいたり、呼吸が苦しくなったりするわけです。

手動運転に切り替える理由

さて、なぜあなたが操縦桿を手動に切り替えたのか?それは、危機を感じたからですよね。では、その危機はなんだったのでしょうか。誰かに命を狙われていたら、それはリアル危機で、自律神経から操縦桿を奪い、心拍数を最大にあげ、血圧上昇し、頭をフル回転、体をフル回転して逃げる事になるでしょう。これは、動物の本能です。危機回避のためのシステムといえましょう。しかし、危機にもかかわらず、不安を感じる時、それはどういうときなのでしょうか。代表的な理由のひとつは、①先ほどエンジンに例えた、不養生による消化力の低下です。消化力が低下すると、気力体力が低下し、思考力も低下します。血圧も低下気味でだるくなります。この時、体の危険監視機能がはたらいて血圧を上げて思考力、意識レベルを保とうとします。もうひとつは②人間の予測危機回避機能です。以前遭遇した危機の記憶に伴う恐怖心から、恐怖を逃れるための思考が高速回転した結果、可能性の低いことまで予想をし、過剰に防衛装置を動かしてしまう、これによって、四六時中手動運転をしてしまう、という事が起きます。手動運転は集中力を要しますので、四六時中手動運転していれば、疲労蓄積も早くなり、さらに体力を落とします。そして落ちた体力で思考すれば余計に思考が混乱していくというネガティブなスパイラルが成立してしまいます。

再び自動運転に戻すには(なぜあなたは手動運転に切り替えてしまったの?)

再び自動運転に戻すにはどうすればよいのでしょうか。飛行機で言うならば、飛行状態が安定していれば、安心して切り替えることができますよね。これには、自分自身の体(機体)への信頼感が鍵を握ります。自分自身の体を信じることができれば、安心して体に操縦を任せることができるし、一時的な不調も、体からの警告メッセージと捉えることができます。自分自身を信じられないから、焦って手動運転をしてしまうという訳です。つまり、自律神経失調症(といわれる状態)からの脱出には、身体機能の安定が必須であるということになりますよね。そしてその身体機能を回復するために必要な手続きが「養生」というわけです。毎回「養生」に戻って申し訳ありませんが、それが真実なのです。「養生」(機体整備)の次に必要なことは、体の警報システムの理解(不調の仕組みを知る)です。不調にいたるまでのプロセスを理解しないままに不快な症状は早々に消してしまう対症療法を続けていると、不意に起きる体調不良に振り回されてしまいますし、そもそも薬では自分自身への信頼感は得られませんよね。そして、体調不良に振り回されないようにするには、自己観察が必要となります。養生の次に大事なことは自己観察。自己観察は、はいわかりましたとすぐにできる事ではありません。養生をしつつ、自分の行動ひとつひとつを大切に行い、自身の体の変化に気を配ることで観察力が養われていきます。

自律神経失調症などという病気があるわけではありません。その本質は自分自身の中にあることを認識して、自分自身の体に対する信頼を高め、自分を肯定できるようになること、これが大切です。

養生ヨガクラス

当院では、養生ヨガクラスを設けておりますが、この自己観察によって自己と向き合うことを練習する場として設置をしています。参加するには、まず個人セッションを受けて頂き、基本的なアーユルヴェーダの考え方に触れて頂いてからクラスに案内しています。今回の話に興味を持たれた方は、クリニックの「養生ヨガ」リンクから入ってご一読ください。

https://www.yojoyoga.com/pages/5839515/yojoyoga

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