Vol.59 夏の湿疹(掌蹠膿疱症)|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.59 夏の湿疹(掌蹠膿疱症)

2023年08月18日

夏に悪化する掌蹠膿疱症

夏が近づくと水疱状の湿疹がぽつぽつ手足を中心に出始めて、それが弾けると猛烈に痒い湿疹で酷くなってくると皮がむけてきます。皮膚科を受診すると掌蹠膿疱症などの病名が付き、金属アレルギーのチェックをしてアレルギーが無ければ対症療法となってステロイド軟膏やビタミンD軟膏を塗って経過を見ることになるのですが、なかなか良くなりません。

皮膚科では比較的難治とされるこの湿疹、東洋医学的な視点を入れることで比較的容易に軽減します。今回は、夏に悪化する掌蹠膿疱症について説明いたします。

体の余剰を体外に排出しようとする生体反応

まず最初に、この湿疹は「アレルギー反応」ではないという事が大事なポイントです。皮膚湿疹は何らかの炎症反応と考えて皮膚科の治療は組み立てられていますが、東洋医学的は、この手の湿疹は体の余剰を体外に排出しようとする生体反応のひとつと考えます。掌蹠膿疱症と同じタイプ、体内の余剰によって引き起こされる皮膚症状には「ニキビ」があります。皮膚科では難治性ニキビには抗生剤が定番ですが、東洋医学的には細菌の餌となる過剰な皮脂が毛穴に溜まることで、細菌が繁殖してニキビになると考えますから、例えば、チョコレートを食べる、ケーキを食べるなど甘味を多くとることを控える、月経前の便通悪化を漢方処方によって改善する事などによって、体に余剰が減れば、速やかに良くなります。

 

掌蹠膿疱症は熱に反応する

さて、話を掌蹠膿疱症に戻しましょう。掌蹠膿疱症も余剰によって水疱が出てくるのですが、ニキビと違う点は「熱」に反応するところです。東洋医学において熱は環境及び身心両方が関係します。ここで「熱」について説明しておきます。

「熱」

環境:夏の暑さ、お風呂に長湯する、サウナにはいる

体:過剰な運動、寝不足、甘味の摂取、飲酒、過食(自分自身の消化力を超えて食べること、量ではない)

心:ハイテンションになる、怒りやイライラを我慢する、何かに熱中したり興奮しすぎる

このように、環境からくる熱と体から発生する熱、心から発生する熱は湿疹にとってみれば同じ意味を持ちます。ゆえに、この全部が掌蹠膿疱症の増悪に繫がるので、生活環境や本人の性格や生活習慣、季節の全てが関係するのでその一部だけに対処しても良くならないため、難治に見えているのですね。

 

掌蹠膿疱症は夏には治りにくい?

このような訳で、掌蹠膿疱症を根治するには、先に挙げたように体の余剰は無いか?熱は籠もっていないかという視点で診断をして対処していくのですが、生活習慣を変えたらすぐに良くなるという訳にはいきません。特に夏場は、外から増悪因子となる暑さ(=熱)が常に加わっているので、中等度以上の症状がある人は、夏の間に完治まで持っていくのは困難です。それゆえ、今年の夏はちょと我慢してね、と6月以降治療を開始した患者さんにはいつもお伝えしてから治療に入っています。また、今までの蓄積の結果が湿疹となっているのですから、根治するには、先に述べた原因となる熱源を取り除く生活を数ヶ月続ける事が必要です。もちろん、受診された場合は、原因分析と生活改善の助言に平行して体内の鬱熱を取り除くための漢方治療を行います。多くの場合「白虎加人参湯」を主体とし、石膏を上手に使いながら治療していきます。

 

掌蹠膿疱症は必ず治る

掌蹠膿疱症は食習慣を含めた生活習慣が深く関わっているため、生活全般を見直す必要がありますが、原因をしっかりと受けとめて癖になっていたそれまでの習慣を変える事で確実に結果がでる皮膚疾患です。なかなか症状がよくならない方は、一度、じっくりご自身の生活を点検してみて下さいね。

参考資料(日本皮膚科学会)

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa27/index.html

 

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