Vol.64  3センチメートルの魔法(歩幅3センチメートルの違いが健康を生む)|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.64  3センチメートルの魔法(歩幅3センチメートルの違いが健康を生む)

2023年12月02日

運動って、30分歩けばいいですか?

「運動って30分歩けばいいですか?」「6000歩でも大丈夫ですか?」「スクワットがいいでしょうか?」、下半身、足腰を強くしましょうね、と言うと判で押したように皆、こう聞いてこられます。この質問が来るといつもまず、次のように返してからじっくり説明を始めることにしています。「結果としてお尻から下の筋肉が増えていたら良いですよ。どうやったら結果が出るでしょうね?考えて観て下さい。」そうすると、皆さん首をかしげて熟考に入ってしまわれる。そんなわけで、今回のテーマは、下半身の強化が思わぬ副産物を生みますよ、というお話しです。

そもそもなんで、腰から下の筋肉を増やして欲しいのか。

①足腰の強化が最も筋肉を増やす効果が高いから。

骨格筋全重量の半分を下半身が占めています。それゆえ、足腰を鍛えるのが最も効率よく筋肉量を増やす事ができて、基礎代謝を上げられます。(一方、上半身は目から近い場所に在る関係で、少し増えたことで増えた感が満載で、満足度が高いが、実際の筋肉量の増加には余り貢献しない。一方、足は遠いところにあるから、ちょっと増えただけでは変化が見えにくく、視覚的満足度に欠ける。)

②足腰が弱ると、内臓が冷えて消化力が落ちるから。

足から戻ってくる血液(静脈血)は、内臓を通過するので、足腰が弱い人(=足が冷える人=心臓に戻ってくる血液が冷たい人)は、冷えた静脈血によって内臓が冷えて、消化力が落ち安い。女性であれば骨盤内が冷やされて子宮も冷えて月経痛が悪化し易い。

③足腰が弱ると、足が攣るようになるから。

一定以上足が冷えると、攣ります。だから、夜中とかに足が攣りやすいのですね。(もちろん、使いすぎによる筋疲労で攣ることもありますが、朝方に足が攣るのは、間違い無く冷えです。)

④足腰が安定すると、姿勢制御が整うようになり、姿勢が安定することで心も安定するから。

(筋肉量増加とマイオネクチン増加という角度からの理屈もありますが、ここでは、こういう事でひとまず受け取ってください。)

⑤何より、歩くのが苦痛でなくなり、駅の階段も楽になり、外出が楽しくなる。

これは説明不要でしょう。

3センチメートルの魔法

特別なことをして鍛えようとしても、私達は飽きっぽい人間です。本当に足腰を強化しようと思ったならば、日常の動作の中に組み込まなければ、続きません。そこで、最近私は、外で歩くときに「3センチメートル歩幅を広げて歩いて見て下さい。」とお話ししています。ただ、この3センチメートル、別に定規で測る必要はありません。ただ、「3センチ、3センチ」と1歩1歩、足を出す度に心の中で3センチと意識するのです。とにかく、一度、やってみましょう。

 

(皆さんが、3センチメートルを実行中)

 

さて、やってみましたか?どうなりました?私が「3センチ、3センチ」をやったらどうなったかをお話ししますので、皆さんも振り返ってみてくださいね。

「3センチで変わった事」

①腕ふりが大きくなった。

②太腿を引き上げる必要があった。

③着地の時にふくらはぎに力が入った。

④背筋が伸びた(太腿を引き上げるのには、背筋を伸ばさないといけない)

⑤歩く事に集中した。(心の声が消えて、色んな考え事、雑念が消えた。)

 

さて、皆さんはどうですか?①〜④は概ねやらなくても想像が付きますよね。これによって足腰のみならず背筋も強化され、腕も強くなります。でも⑤の「雑念が消えて歩く事に集中」、はどうですか?これって横文字にすると「マインドフルネス」ってやつですね。

そうなんです、「1歩1歩に3センチと意識する事」が身体への意識の集中を促し、心のざわつきを消してあなたをマインドフルにしてくれたのです。つまり、3センチがただの散歩を「歩く瞑想」に変えてくれるという訳ですね。私は山伏なのですが、山を歩くときに気がついた事があります。それは「怪我をするのは何でも無い平地」ってことです。危険な場所は細心の注意を払うからめったなことで怪我はしません。(恐怖心で姿勢制御に戸惑いができてしまうときは別ですよ)怪我をするのは、いたってなんでもない、平地で木の根っこなどに引っかかって転ぶのです。下手をすると、え?なんで?ってところで転んで骨折をする。座禅をしても雑念ばかりでって、最初はなりますよね。これは、身体への集中がキチンと出来ずに心が体から離れることがひとつの理由です。山伏はひたすら山を歩きます。これを歩行禅と呼ぶことがあります。その理由は、この3センチメートルの違いが生み出すマインドフルネス効果にあるのです。

足が既に弱っている人への注意

さて、じゃあ、3センチ歩行をやってみる!と思っても膝がすぐ痛くなるから無理!という人も居ることでしょう。膝が悪くなるのは、膝を支える靱帯、筋肉が弱って膝が不安定になっているからです。ゆえに、膝痛を良くする為にも、歩行して筋肉を鍛えなくてはならないけれど、歩くと不安定さによって膝が痛む。そして反って歩けなくなる、と言う人も居ると思います。既に今、水が溜まっているひとは、まずその治療が必要ですが。(膝の水、抜いてはいけませんよ!抜かずに漢方で治療しましょう。漢方薬で速やかに膝の水は解決しますから、漢方医を訪ねてください。)膝が既に弱っている人は、迷わずサポーターを使ってください。私が自分で使った使用感では、

バンテリンコーワ 加圧サポーター ひざ専用

https://hc.kowa.co.jp/vantelin/supporter/product/knee_comp.php

が良かったです。これをまず膝に装着してから歩き始めてください。

3センチメートルが与えてくれるもの

「3センチ、3センチ」「3センチ、3センチ」とやってみましょう。普段散歩をしているひとなら、その時間を「3センチ」の時間にしてみて下さい。様々な問題を抱えて、心が騒がしくなっている人、イライラして落ち着かない人、ちょっと手を休めて、作業を止めて、外に出て「3センチ」をやってみて下さい。「3センチ」に慣れてきたら、自然と歩くのが速くなり、足腰が安定して代謝があがり、冷えが取れ、消化が良くなってお腹の張りが軽減して便通が良くなる。結果として心の安定も保たれるようになる。これが3センチの魔法です。

追記

とはいえ、今の今、足腰が弱って、消化力も落ちきって、お腹も、、と言うそもそも、歩く気力が湧かない人は、まず、足湯です。外から熱を補う事。これについては、関連記事がありますので、こちらをご覧下さい。

https://www.longwood-senshu-cl.com/news/entry591.html

 

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