Vol.27 あなたの心の速度は何km/h?|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.27 あなたの心の速度は何km/h?

2022年08月01日

移動速度によって変わる景色

歩き、自転車、普通列車、新幹線と移動速度は異なりますが、その時に見える風景は同じですか?異なりますか?ゆっくり歩いていれば見える道端の花や木にとまった鳥、ふと立ち止まって花の中を覗き込んだら見えるミツバチやミツバチの足についた花粉は、列車の車窓からは決して見えません。一方、新幹線の車窓からは夕焼けに染まる富士山の西側と、シルエットになる東側を同じ時間に見る事ができます。動く早さによって見える景色や見える範囲は異なります。これは心においても同じ事が言えます。

 

心の速度と騒がしさ

心の速度は、思考の早さ、心の中の声の騒がしさ、集中力といった形で知覚できます。現代社会は効率を重視します。そのため、とかく「早く」判断し処理することを私達に要求しつつも、大きく感情を動かすこと(楽しい!嬉しい!)をよしとします。それゆえ、テキパキ仕事をしてさっさと片付けていく人が称讃され、全身をつかって感情を表現することが喜ばれますが、乗り物をつかって高速移動をするときに多くの燃料を必要とするように、心を高速に動かすには、エネルギーを多く必要とします。(パソコンに例えるならばハイスペックで消費電力が多い)それゆえ、エネルギーが不足するとたちまち心の活動に支障を来します。心にエネルギーを供給するのは体ですから(生きている限り、体のサポートを得て私たちは思考し、判断をします。)、体を労らずに無茶な使い方をしていると、消化力が低下してエネルギーの供給が足りなくなり心の働きは低下します。感情を大きく動かすと「血」(前回のブログを参照)

https://www.longwood-senshu-cl.com/blog/entry351.html

を消耗し、消耗の結果心の思考速度は低下します。さらに女性は月経前後は体の必要でエネルギーを消耗します(高温期には体温を上げたぶんだけ余分にエネルギーを消費していますし、月経にて血を失うとその分消耗します。)から、月経前後に思考速度が低下するのは当然のことといえます。

 

ゆっくりするのは「悪」ですか?

さて、ここで問題です。心の速度が低下することは「悪」ですか?少し立ち止まって考えてみましょう。最初に書いたとおり、速度によって景色は違います。心がみる景色も変わるわけです。月経前後に仕事を優先して、心の速度を保てるようにしたいと考える気持ちはわかりますが、その分だけ身体に負荷をかけることになりますし、そのツケは必ず後で自らの体で払うことになります。でも、心の速度を落とすことで、普段気にもとめないことにも気がつく事ができるとしたら、、?(普段気にならないことが気になって仕方がなくなるってネガティブに考えるのではなくて、、)毎月、立ち止まって自らの体と対話をし、心の速度を落として、ゆっくりとした心象風景とともに過ごす時間とすることができれば、違った人生を生きられると思いませんか?

 

体と心はコインの裏表

体と心はコインの裏表。体がつらいときは心もつらい。心側でつらさに蓋をすると、体にはその分だけ負担がかかる。夏は気血を消耗する季節です。いつもよりもう少しだけ体に意識を向けてみれば変化を感じられるはずです。

 

(付記)

現代のように高速移動する乗り物が無かった時代に、広い範囲を俯瞰する視野を得るには「山に登る」必要がありました。山に登ると下界は小さく見え、広い範囲が見えます。山に登って里で確認し、里で感じたことを山から眺めてみる、そうやって視座を切り替えることで洞察を深めたのでしょうね。

 

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